フードトラックビジネス

 オフィス街では弁当販売、住宅街ではパン販売など、移動販売のフードトラックを見掛けることが多くなっています。フードトラックビジネスの長所は、費用の安さです。店舗を構える飲食業の場合、初期費用で1000万円単位、また家賃などのランニングコストが毎月掛かってきます(*1)。一方、フードトラックビジネスは、軽ワゴンの調達及び改造程度の準備などで、初期費用は数十万から150万円程度で済みます(*1)。フードトラックビジネスのFCに登録した場合でも、200~300万円で済みます。

 フードトラックといえば道路営業をイメージしてしまいますが、日本の道路交通法により、道路営業は禁止されています(*1)。よって実際のフードトラックは、軒先や空きスペースの私有地を借りる形で営業をしています(*1)。またイベント会場で出店料を払い、営業するケースもあります(*1)。つまりフードトラックビジネスにも、場所代のレンタル料や出店料などの「家賃に相当する営業場所のランニングコスト」は存在するのです。

 またフードトラックは公的機関に自動車営業の「営業許可」をもらう必要があります(*1)。加えて、食品を提供するので、「食品衛生責任者」の資格も必要です(*1)。ちなみに東京都では、「食品衛生責任者」の資格は受講料1万円の半日コースで取得可能で、有効期限はありません(*1)。

 隣国韓国の首都・ソウルの明洞でも露店営業が盛んです(*2)。多くの露店は長らく不法に道路を占有し、食品衛生法の許可もとらない形での営業を続けてきました(*2)。しかし昨年の2016年6月から、ソウル市中区は、明洞の露店に対して道路占用許可制度を開始しました(*2)。露店側が年間130万ウォンの道路占用費用を支払い及びルールを守れば、露店営業が合法的に認められる制度です(*2)。露店側に課せられるルールとして、出店は1人1カ所、区役所での実名登録、食品販売の場合食品衛生法の順守などがあります(*2)。3回違反した露店は撤去となります(*2)。

<引用・参考文献>
*1 『日刊ゲンダイ』2016年12月10日号(9日発行)「成功のヒミツ 失敗しないコツ≪93≫」, p7
*2 『週刊エコノミスト』2016年7月12日号「韓国 明洞の露店法整備 不法営業を根絶へ」(趙章恩著), p65
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日本酒の種類

 「純米酒」「本醸造酒」「大吟醸酒」等、日本酒の種類名は多いです。日本酒の種類名は個別の背景に基づいて付けられていません。体系的な分類に基づいて、名付けられています。まず日本酒は、普通酒と特定名称酒に大別されます。日本酒全体の流通量において、普通酒の割合は約70%、特定名称酒は約30%です。特定名称酒は、時間や手間を掛けて造られた日本酒を指します。特定名称酒は8種類存在します。純米酒、本醸造酒、特別純米酒、特別本醸造酒、純米吟醸酒、吟醸酒、純米大吟醸酒、大吟醸酒の8つです。
*今回記事を作成するにあたり、『白熱日本酒教室』(杉村啓、星海社新書)の情報を参考にさせて頂きました。

 特定名称酒は、「純米グループ」と「非純米グループ(醸造アルコール入りグループ)」に二分されます。「純米グループ」は、純粋に米だけで造られた日本酒を指します。具体的には米と米麹だけで造られた日本酒です。純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒の4つで成り立っています。名前に「純米」という言葉が必ず入っています。「非純米グループ(醸造アルコール入りグループ)」は、米と米麹に加えて醸造アルコールによって造られた日本酒を指します。米以外の物が添加されている為、「純米」という言葉を使えません。本醸造酒、特別本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒の4つで成り立っています。米が不足していた戦時中に、日本酒を造る際、醸造アルコールが使用されていました。その背景がある為、悪い印象が醸造アルコールに付与されています。しかし現在、特定名称酒において醸造アルコールの使用目的は、香りの引き出しや味わいの向上です。

 特定名称酒は、「精米歩合」と「吟醸造りの有無」の2基準によっても、分類されます。精米歩合は玄米の削り具合を示します。玄米を削ることで、食用米つまり白米は出来上がります。日本酒も、玄米から削られた形態の米で造られています。精米歩合は玄米形態を100%としています。精米歩合は「削り取った割合」ではなく、「削り残された割合」の数字を示します。白米の精米歩合は約90%です。つまり白米は「玄米形態から約90%削り残された米の形態」(「玄米形態から約10%削り取られた米の形態」)を意味します。酒を造る米の場合、白米以上に削られます。米の表面に近い箇所はタンパク質を多く持っています。酒に変わる際、タンパク質は雑味になります。日本酒の味を阻害する要因です。

 特定名称酒の精米歩合は、70%以下と基本的に決められています(例外はあります)。玄米から30%以上削り取られます。特定名称酒において精米歩合61~70%である酒が、純米酒と本醸造酒です(純米酒に関しては2004年以降精米歩合70%より上でも、醸造アルコールが入っていなければ、「純米酒」と名乗れるようになりました)。さらに米を削ることで雑味は少なくなり、味は向上します。代償として、仕入れ負担が高まります。米を削る量が多ければ、酒造りの米は増えるからです。特定名称酒において精米歩合60%以下である酒が、特別純米酒と特別本醸造酒です。精米歩合61~70%の特定名称酒名に「特別」という言葉が追加された名前になっています。つまり純米酒は「純米グループメンバー」「精米歩合61~70%」(実際は、精米歩合の制限はありません)、本醸造酒は「非純米グループメンバー」「精米歩合61~70%」の特定名称酒を示す酒名です。また特別純米酒は「純米グループメンバー」「精米歩合60%以下」、特別本醸造酒は「非純米グループメンバー」「精米歩合60%以下」の特定名称酒を示す酒名です。

 吟醸造りは、『白熱日本酒教室』(杉村啓著、星海社新書)によると「特別に吟味した材料を使い、低温でじっくりと発酵させて造る手法」(p.29)です。高温に比べて、低温で造ると、菌は活発化しません。アルコール作りに時間が掛かります。稼働時間が長くなり、製造側にとって負担です。しかし吟醸香というフルーティーな香りを持つ付加価値の高い酒になります。特定名称酒において、精米歩合51~60%であり吟醸造りである酒は、純米吟醸酒と吟醸酒です。さらに米を削った精米歩合50%以下であり吟醸造りである酒は、純米大吟醸酒と大吟醸酒です。つまり純米吟醸酒は「純米グループメンバー」「吟醸造り」「精米歩合51~60%」、吟醸酒は「非純米グループメンバー」「吟醸造り」「精米歩合51~60%」の特定名称酒を示す酒名です。また純米大吟醸酒は「純米グループメンバー」「吟醸造り」「精米歩合50%以下」、大吟醸酒は「非純米グループメンバー」「吟醸造り」「精米歩合50%以下」の特定名称酒を示す酒名です。

 特定名称酒の場合、「製造側の負担具合」によって分類されている側面があります。米を多く使えば(精米歩合の数値が低ければ)、「特別」「大」という言葉が名前に追加されます。長い時間を掛けて造れば(吟醸造りを行えば)、「吟醸」という言葉が名前に追加されます。

日替わりオフィス弁当

 勤め人の昼食は基本的に2択です。外食か弁当(自分で作る弁当)です。外食の長所は「家事労働の減少化」、つまり「お弁当を作る時間・手間」が省けることです。一定水準以上の質・味が担保されている為、満足度も高くなります。加えて、職場の立地環境に左右される側面はありますが、昼食の店を選べる自由度を手にできます。短所は高い出費を迫られることです。日々積み重なる性格の為、月単位で見ると、看過できない数字になります。一方、弁当の長所は昼食代を抑えられることです。外部の力を借りずに、自分(家族の誰か)が作るので、お金は浮きます。短所は質・味が落ちることです。調理時間が経っていますので、当然冷たく、質は低下します。冷たさは味にも大いに影響します。好きな物を入れられることが、弁当を作る楽しさとしてあります。でも調理の腕次第で、楽しみの幅が決まってしまいます。調理時間が長く掛かってしまう人は、朝の短時間に、弁当に凝ったおかずを沢山用意することはできません。

 隠れた昼食の存在として「日替わりオフィス弁当」があります。一定人数分の日替わり弁当を職場まで配送してくれるサービスです。形態は弁当ですが、「外食」の要素を取り込んでいます。工場で大量に作られる為、自分で作らずに済みます。使用済みの容器は業者に持ち帰られます。弁当屋に買いに行く場合に比べて、良い所として「時間の省略化」があります。外に買いに行く手間がないです。悪い所は、選択権がないことです。日替わり弁当である以上、自分の好みを優先したり、苦手な物を排除できません。負の要素を緩和する工夫も見られます。日替わりオフィス弁当業者によっては、1つのおかずを主要にするのではなく、複数のおかずを少量据える形をとっています。魚の小さな切り身、少量の牛肉炒め、小さな揚げ物、煮物などという内容です。魚を嫌う人でも、食べられる弁当になっています。多品種おかずの供給を可能とさせているのは工場生産です。規模のメリットを活かして、「多品種のおかず」という付加価値を生み出しています。

ウイスキーとは何か

 ウイスキーは高いアルコール度数を特徴とするお酒です。アルコール度数は40度。アルコール度数5度のビールのように、一気に飲み干す飲酒方法は適しません。時間を掛けて少量を飲む方法か、炭酸水か水で割って飲む方法になります。しかしアルコール度数の高さの割に、ストレートで飲む場合、酔いの速度は遅いです。ウイスキーの高いアルコール度数は口の中を強く刺激する為、少しずつしか飲めません。結果、アルコールの摂取量・摂取速度が抑制されます。食事中の喉の渇きを癒す食中酒としては不向きで、食後酒として主に飲まれています。
*今回記事を作成するにあたり、読売新聞2015年1月5日の記事、『白熱日本酒教室』(杉村啓著、星海社新書)、サントリーホールディングス株式会社サイト、国税庁サイト(「酒類課税数量の推移(国税局分)」)の情報を参考にさせて頂きました。

 ウイスキーの需要は、時代と共に変化しています。お酒は嗜好品の為、特別に税金が掛けられる商品です。法治が行き届いた日本において密造酒の存在は小さいです。普及するお酒の大半が課税されています。課税数量の推移によって、各酒の需要の変化を知ることができます。国税庁サイト「酒類課税数量の推移(国税局分)」のデータによれば、ウイスキーの課税数量は、1970年「約13万kℓ」、1975年「約22万kℓ」、1980年「約33万kℓ」、1985年「約25万kℓ」、1990年「約16万kℓ」、1995年「約11万kℓ」、2000年「約10万kℓ」、2005年「約6万kℓ」、2010年「約8万kℓ」という数字を示しています。1970~80年代ウイスキーは高い需要を持っていました。しかし1990年代以降、ウイスキーの需要は下降線を描きます。背景には焼酎やワインの台頭があります。

 焼酎はウイスキーと同じ蒸留酒です。アルコール度数は約25度で高いですが、ウイスキーよりは低いです。実際ウイスキーより、ストレートで飲む際、飲みやすいです。価格の安さも特長です。また原料によって味が大幅に変わる為、違いを楽しむことができます。主要な原料である芋、麦、米以外に、黒糖、栗、しそ等も焼酎の原料として使われています。一方、ウイスキーは高いアルコール度数を持つ為、それぞれのウイスキーの違いを素人は実感しにくいです。ワインはビールや日本酒と同じ醸造酒です。アルコール度数は約14度で、日本酒と同程度です。ぶどうを原料にする為、フルーティーな味・香りを特徴とする為、受け入れられやすいです。

 ウイスキーの製造方法は多くの工程を必要とします。原材料は大麦です。大麦を発芽・乾燥させて麦芽を作ります。粉砕した麦芽と温水を混ぜる過程で、麦芽のデンプンは糖分に変わります。酒造りにおける、糖化と呼ばれる作業工程です。糖化された麦汁に、酵母を加えます。酵母は糖分を発酵させアルコールと二酸化炭素を作る役割を果たします。発酵工程によって麦汁はアルコール分を獲得します。しかしアルコール度数は10度未満です。蒸留という工程を加えることで、アルコール度数を高めていきます。蒸留は沸点の違いを活かして目的物質のみを抽出させる手法です。蒸留器の中で加熱し、沸点が早いアルコールを気体に変えて分離させます。気体になったアルコールは冷却されることで、液体に戻ります。アルコール度数は高まり、ウイスキーの原酒は完成します。その後、樽に入れられ、熟成の工程を経ます。最後の工程がブレンドです。多種類のウイスキーを混ぜることで、飲みやすいウイスキーが生まれます。

 ウイスキーの種類は大別して3つあります。大麦麦芽だけを原料とするモルトウイスキー、トウモロコシやライ麦や小麦を原料とするグレーンウイスキー、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜたブレンデッドウイスキーの3つです。モルトウイスキーは独特の味で豊かな香りを特徴としています。1つの蒸留所で作られたモルトウイスキーをブレンドした物はシングルモルトウイスキーと呼ばれます。複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドした物はブレンデッドモルトウイスキーと呼ばれます。生産が限られる為、モルトウイスキーは高額商品です。グレーンウイスキーは軽い味ですが、香りが薄く、主にブレンデッドウイスキーのブレンドとして使用されます。ブレンデッドウイスキーは市場で最も普及しているウイスキーです。独特のモルトウイスキーと軽さを持つグレーンウイスキーが混ざることで、落ち着いた味になっています。

 世界のウイスキーは主に5つの場所で作られています。イギリスのスコットランド地方、アイルランド、カナダ、アメリカ、日本です。アメリカのウイスキーの1つにバーボンがあります。原料の51%以上にトウモロコシを使う等の条件を満たしたウイスキーがバーボンと呼ばれます。トウモロコシ生産大国アメリカを象徴するウイスキーです。日本では主にサントリーとニッカウヰスキー(アサヒビールグループ傘下)がウイスキーを製造しています。

ハイスピード・ハイテンポの思想に成り立つ牛丼チェーン店

 外食店を利用される時、皆さんは何を期待されているでしょうか。多くを占めるのは、やはり味と価格でしょう。当然、不味ければ行きたくありませんし、味に対して高価格なら行かなくなります。料理が美味しくてまた低価格での提供は、私達が外食店に望む2大要素です。それとは別に、「時間」も私達は外食店に対して期待しています。

 サラーリマンの昼休憩は、平均的に1時間だと思われますが、その間に昼ご飯を食べなければなりません。それでいて、昼ご飯を食べた後の、自由時間も確保したいです。そうすると、昼ご飯を食べる時間を「短縮化」することが重要になってきます。「昼ご飯を食べる」と書きましたが、このサラーリマンの平日における「昼ご飯を食べる」は幅広い定義を持ちます。「昼ご飯を食べる」は、ただ食べ物を口に入れて、歯で噛みきるなどの行為だけではないのです。もちろん自分で用意してきたか、出勤途中で買ってきたお弁当を職場の自分の机で食べる場合は問題ありません。しかし外食するサラーリマンにとって、「昼ご飯を食べる」には「外食する店まで移動する」「外食する店の席が空くのを待つ」などの行為も含まれます。

 時間の例でいえば、「昼ご飯を食べる時間」とは、「外食する店まで移動する時間」+「外食する店の席が空くのを待つ時間」+「注文した料理を待つ時間」+「料理を食べる時間」+「外食した店から、職場まで戻る時間」の合計なのです。それを1時間以内に済ませないといけません。これは、外食をするサラーリマンにとって制約です。低価格で美味しいハンバーグ定食を食べられる洋食店が、仮に職場の近くにあっても、昼休憩の時間に1時間待たないと座れないのなら、そのお店を利用することはできません。もちろん時間に余裕のある休日なら1時間程待っても問題ないです。しかし働いている平日における外食の昼ご飯は「時間」に縛られる性格があるのです。

  よってサラーリマンは、外食するお店に「早い時間」を望みます。そして今最も、その期待に応えているのが牛丼チェーン店です。すき家、吉野家、松屋という牛丼チェーンは、とにかく「早い」のが特長です。今はどこの外食店も、料理提供の迅速化に励んでおり、10分前後で料理を提供されることが多いです。ただその中でも牛丼チェーン店の場合は、素早く客に提供できる牛丼という料理を主軸に置いていることもあり、席に着いてから、すぐに頼んだ料理を食べることができます。5分待てば、長い方ではないでしょうか。他の外食店が仮に料理提供の時間を10分掛かっていたとして、ある牛丼チェーン店が牛丼提供の時間を2分掛かっていたとします。この場合、10分掛かる店ではなく、2分で提供される牛丼チェーン店に行けば、8分という「可処分時間」を手にすることができます。昼休憩1時間における、この8分間は非常に大きいです。タバコを吸う時間や、読書したりする時間、銀行のATMでお金を引き出したりする時間にあてることができます。

  また牛丼チェーン店の場合、「席が空きやすい」のも特長です。席が空くまで、待つ時間が少ないのです。素早く料理が提供されて、なおかつ牛丼の味も美味しくてお金も少なくて済むので、多くのサラーリマンは牛丼チェーン店に1⒈時~14時ごろ押しかけます。よって少し席が空くまで、待ったりすることもあります。けれども席がそのうち空きます。先ほど席に着いたばかりの客が、すぐに提供された牛丼を素早く食べ終え、少しの時間休んだ後会計を済ませて席を立ってしまうのです。牛丼チェーン店の客は長居しません。性善説に拠れば、席が空くのを待っている人に申し訳ないという気持ちが働き、さっさと席を立つのかもしれません。しかしそういった人の性格に頼らなくても、牛丼チェーン店は、「食べ終えた客に席を素早く立たせる」ように店を設定しています。

  まずカウンターの「席と席の間隔」を狭くしています。一般的には、席の間隔を狭めることでその分席数を多くして、客を沢山入れられるようにしていると解釈されています。他の側面もあります。「席と席の間隔」を狭めることは、同時にそこに座る客同士の身体の距離も狭めることになります。身体的には、席に座ると同時に体の動かせる範囲が狭まります。窮屈です。また精神的にも負荷がかかります。見知らぬ他人と隣同士というのは、不気味に聞こえますが、普段の私達は電車の席や病院の待合室で経験することです。慣れた事ではありますが、自分の家の中のように自由には振舞えず、一種の緊張状態には置かれます。一方食事という行為は、食欲が満たされることもあり、良い気分になります。見知らぬ他人を近距離にして、食事を食べるというのは、複雑なことなのです。逆に、昼ご飯のピークを過ぎた時間帯に行って両隣の席が空いていると、気分が良くなったりします。

 店内の「騒がしさ」も、客に素早く席を立たせるのに、貢献しています。厨房と食事をする席が近くにあることで、接客の慌ただしさが食べている客に伝わってきます。大きい声が飛び交っています。美味しい牛丼を食べて、しばし一眠りといきたい所ですが、とても眠れる環境ではありません。外食業界では、ある1席が1日のうちに何回使われたかという、回転数が重視されます。1日に1回座られただけより、1日に5回座れられたほうがお店に沢山注文したことを意味し、お店には有難いのです。特に1回の客単価が低い牛丼チェーン店にとっては、回転数を上げることは重要になってきます。店内の場を作っているのは、接客する店員です。その店員が、素早く接客することで、客の側もその調子に引きずられて、素早く食べて、素早く席を立つようになっています。結果、次の客は席が空くのを待たずに、料理を食べることができます。

 客側にとって「注文した料理を待つ時間」を短縮化ができ、「外食する店の席が空くのを待つ時間」も短縮化できるのが、牛丼チェーン店なのです。外食業界において牛丼チェーン店の存在感が大きい背景には、サラーリマンに味や低価格だけでなく「昼休憩の可処分時間」も供給していることがあったのです。そしてそれを可能にしているのが、ハイスピード・ハイテンポ、日本語で言えば高速・急調、を特徴にした接客です。ハイスピード・ハイテンポは、料理を提供するお店側の行動原理だけではなく、私達客側の行動原理にもさせられています。結果、客の自主的な行動原理に、いつの間にかなっています。ハイスピード・ハイテンポの行動原理が、牛丼チェーン店のお店にいる人々を支配しているのです。

 ところが、ハイスピード・ハイテンポに疲れる時があります。客側だけの視点で言えば、「料理が来るのを少しの時間待ちたい」という余裕を欲する時があります。職場の自分の机以外に、職場周りに自分が座れる椅子は、ないものです。よって昼ご飯で利用するお店の席が、「昼休憩における自分の椅子」になる場合があります。そうなると、「注文した料理を待つ時間」だけは、一定欲しくなります。待ち時間の間に、水を飲みながらスマートフォンでSNSを確認したりするのは気持ちが和らぐ行為で、昼休憩の大事な一環です。

  また食べ終わった後も、数分ぐらいは店内に居させてくれる雰囲気があれば、SNSの確認の続き等を行えますし、午後から取り掛かる仕事について考えたりすることがきます。この時間を消滅させているのが、牛丼チェーン店です。スマートフォンを取り出す間に、注文した牛丼が置かれます。また食べ終わったら、長居できない環境下でした。

 人々は時に、ハイスピード・ハイテンポの牛丼チェーン店でなく、その速度とテンポを落とした外食店も求めます。「早い時間」ではなく、「少し早い時間」の外食店です。客はお店側に「時間の余裕」を要求するのです。しかしそのことは、客のお店への滞在時間が長くなることを意味するので、お店の回転数は低下します。店側は客単価を上げざるをえません。もちろん客側も、お金が多少掛かっても、「時間の余裕」を楽しみたいということで、そのような「少し早い時間」の外食店を選ぶので、不都合ではありません。つまりこの場合客は、「時間」を金で買っているのです。逆に、牛丼チェーン店に行く客は、「時間」を売っているのです(時間を犠牲にすることで、料金を割引してもらっている)。

 外食業界において、「店への滞在時間」と「価格帯」は比例関係にあるといえます。店への滞在時間が長ければ長いお店ほど、価格帯は高くなります。一方、店への滞在時間が短ければ短いほど、価格帯は低くなります。例外は、ハンバーガーチェーン店や喫茶店です。ハンバーガーチェーン店や喫茶店は、滞在時間が長い割に、価格帯が低いです。もちろん、その「コーヒー1杯で長居できる」ということが他と差別化できる点でありますが、同時に「回転数が低い割に、客単価が低い」という構造的な脆弱性を抱えることになっています。ハンバーガーチェーン店や喫茶店は常に、「回転数の上昇」と「客単価の上昇」という課題に向き合わなければならないのです。
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